Klein(クライン)の自転車
2024-10-14 / 4847 view
いまはなき幻の自転車ブランドKlein
Klein(クライン)はかつてアメリカを拠点としていた自転車ブランドである。しかし、現在は正式に存在するメーカーとして認められていない。つまり、いまはもう存在しないブランドである。実際、Kleinのロードバイクは、少数のディーラーがひそかに取り扱っているようなレアなものとなっている。
創立者はゲイリー・クライン。1973年、彼はマサチューセッツ工科大学の学生で、自転車のアルミフレームに強く関心を抱いていたという。そして、在学中に自らオリジナルのアルミバイクを作製した。学業、研究の目的でおこなったアルミバイク製作であったが、これが大きなきっかけとなり、大学の教授や、友人と共に1975年に自転車ブランドを立ち上げる運びとなったのだ。ここにKleinは誕生したのである。
1980年代にはマウンテンバイクの販売も開始し、その規模は徐々に大きいものとなっていった。それ以降もKleinはフレームの開発を続け、大口径パイプを使用したり、ボロン・カーボンで補強したりと、試行錯誤を重ねていた。
しかし、1990年代に入ると業績は悪化しはじめる。廃棄物の処理に関して大きな違反を犯していたことなどが判明し、莫大な罰金の支払いを命じられることとなる。またKleinの製造したロードバイクに重大な欠陥が見つかり、大規模なリコールにいたってしまうなど、会社の存続が大変困難な状況へと陥ってしまう。
結果として、2002年からは従業員のほとんどがリストラされ、2006年には企業としての登記は無効となってしまったのだ。このようにして、Kleinは倒産というかたちで幕を下ろしたため、いまでは幻のブランドとなっているのである。
Klein自慢のカラーデザインがほどこされたQuantum
そんなKleinの手がけたロードバイクにも、有名なものがある。その名もQuantumというバイクであるが、その綺麗な塗装は思わず見る者を魅了してしまうほど美しく感じられる。Quantumの鮮やかなフォルムは、他社には見られないカラーデザインだといえるだろう。
カラーやフォルムは最上級に位置するといっても過言ではないが、その機能性はというと、なかなかタフであるという。なぜなら軽量でかつ剛性がかなり強く、漕ぎだしはスムーズだが衝撃をほとんど吸収しないため、凹凸での突き上げもなかなかのものだそうだ。
またフォークやヘッド、ステム等もKleinオリジナル規格のため、融通が利かない。どこまでも独自路線を突き進むロードバイクという印象が強いのがKleinの特徴だ。
Kleinが確固として残していった情熱
このようにKleinというブランドは、オールラウンドな機能性を追求したり、レース目的で熱心に開発を重ねるというよりは、独特な塗装やオリジナリティあふれる各パーツなど、他には見られないKlein独自のロードバイクを製造することに最も力をいれていたようである。
とはいえ、ナイーブに機能性を犠牲にして、どこまでも独自路線を突っ走って行くというような、いくら倒産したからといってそこまで馬鹿正直に意固地なブランドではない。Kleinが理想として掲げていたロードバイクとは、オリジナルのカラーウェイをほどこし、すぐれた独自規格によりメンテナンスフリーの、真に頑丈なバイクを作ることであった。そう考えると、Kleinのバイクに対する情熱は強烈なものであったといえるのではないだろうか。
日本でも、いまだに根強いファンは数多くいるのだそうだ。いまはなき幻のブランドであるが、Kleinの注ぎ込んだ熱やパッションは、そのバイクに乗ってみるとはっきりと胸に感じることができるはずだ。
大学在籍時のフレームの研究というほんのささいなきっかけから、創立者のゲイリー・クレインが仲間と共に、おれたちが唯一無二の自転車を作り上げてやるんだと意気込んだ彼らのスピリットは、Kleinを愛するファンたちのあいだに、そして現在において実際に搭乗するライダーたちの胸の中に、いまでも鮮明に生き続けている。