FXS1200[ローライダー]
2024-11-21 / 2770 view
FXS1200、舘ひろしも乗り回した名車
FXS1200[ローライダー]は、1977~1979年に販売されたヴィンテージハーレーだ。パワーユニットには、独特のドコドコ感のあるサウンド&振動が魅力の1207cc鋳鉄製ショベルヘッドエンジンを搭載。このエンジンは、いわゆるコーンショベルと呼ばれるタイプで、点火装置やガバナ進角装置(アドバンスユニット)を内部に収めたコーン(円錐)型のカムカバーが装着されている。
これは機能面のみならずデザイン上も大きな特徴であり、外装色は77~78年式モデルがガンメタの一択で、79年式モデルはガンメタをベースとしつつ、タンクに黒基調のペイントを加えたツートン、そしてブラックの二択となっている。フロントホイールには、77年式はモーリス7本キャストホイールが純正採用されており、78~79年式は9本キャストホイール。
フロントディスクブレーキはデュアル仕様となっており、強力な制動力を確保した。マフラーについては、77年モデルには、78年モデルよりも少し長めで内部構造が異なるスラッシュカットマフラーを標準装着。点火装置については、77年式はポイント式、78年からはセミトランジスタ式になっている。ちなみに、かつて大ヒットした刑事ドラマ・西部警察において、舘ひろし扮する巽刑事がワイルドに乗りこなしていたハーレーは、このFXS1200だ。
ハーレーの歴史を物語る一台
FXS1200の新車が販売されていた当時、正規ディーラーによる輸入台数は限定的だったことから、現在日本国内にある個体の多くは並行輸入車だと考えられる。実際、キロ表示メーター搭載の個体のみならず、マイル表示メーターの個体も多い。今でこそ、二輪車オークションを核とした業者間の流通過程において走行距離管理システムが普及し、メーター不正は大幅に減っているものの、部品交換が容易に行えるという二輪車の特性上、以前はメーター交換や改ざんは事実上野放しという状況だった。そのため、正規ディーラーで実走行として売られているものなど、履歴のはっきりとした個体を除き、オールドバイク、とりわけ輸入車のメーター読みの走行距離は、あまりアテにできないと考えたほうがよいだろう。となると、メーター読みの走行距離にとらわれず、実車の現状確認が非常に大切になる。
ここで留意すべきなのは、ハーレーそのものが大なり小なりカスタムを施して乗られるケースが多いことに加え、新車から相当な年数が経過したヴィンテージバイクは、純正状態の個体が非常に少なくなっているという点だ。キャブレターを純正のCV型から社外品のSU型などに変更したり、サスペンションやハンドルを社外品に交換したりするのは序の口で、特にFXS1200は、より地上高を低くするために社外品のリジッドフレームに換装するといった大掛かりなカスタムもよく行われている。
FXS1200が世に送り出された当時の、ハーレーを取り巻く状況についても触れておかねばならない。当時のハーレーは経営不振により、1969年から1980年までAMF(AMERICAN MACHINE AND FOUNDRY)の傘下企業となっていた。AMFは、ボウリング設備やテニスラケットなどのスポーツレジャー分野をはじめ、自転車や原子炉まで幅広く手掛けることで名を馳せた多角的総合企業だ。その傘下に入っていた時期に製造されたハーレーのエンブレムは、AMF HARLEY DAVIDSONと記載されていた。FXS1200のオリジナルタンクにも、HARLEY DAVIDSONのロゴの左側に、さりげなくAMFの記載がされている。
ノーメンテナンスでは乗りこなせない
AMF傘下で生産されたハーレーは、当時の経営状況を反映してか、生産管理が大味だったようで、慢性的にオイル下がりに悩まされてきたFXS1200の日本人オーナーが、エンジンを自分でオーバーホールしたところ、あろうことかオイルシールの入れ忘れを発見したという話もあるほど。
ただ、そういった大味さもあることを前提に、経年劣化や損耗、そして度重なる故障でさえも受け入れて付き合っていくのが、FXS1200を含めたヴィンテージハーレーのオーナーに必要な流儀なのだ。言わば、結婚式の「楽しい時も病める時も、伴侶を愛し続けますか?」と同じ。そのためには、何をさておいても、愛車を維持していくための潤沢な資金が必要となる。中古を安く買ってノーメンテナンスで乗れるほど甘くはない。まさにオーナーを選ぶ車種であることも、マニア心をくすぐる大きな理由のひとつであると言えるだろう。