VRSCF [V-ロッド マッスル]
2024-09-10 / 832 view
VRSCF、魔性のマシン
近未来をまるでイメージさせるVRSCファミリーのデザイン性の高さは、今まで登場したどのモデルにも共通しているものだが、この VRSCF V-RODマッスルはそれらをベースにさらに上乗せされたグレードアップ版と言えるだろう。
まず、メーター周りだ。
LEDターンシグナルがミラーステイにビルトインされてるのはこのモデル独自のもので、視認性が非常に高くなっている。ここまでグレードの高いアイテムが標準装備された点に驚くライダーも多いだろう。さらに、配線が中を通っているハンドルバーは、このファミリーの中で一番低くマウントされている。
また、エアクリーナーカバーを抱え込んだようなフォームなど、そのビジュアルはこのファミリーの基本スタイルともいえるドラッグレーサーそのものだ。さらに、フォークには剛性の高い倒立フロントフォークが搭載されており、新しいデザインのフロントホイールとフェンダーが備えられている。
シフトダウン時の後輪ロック防止にレバー操作時の負荷を軽くするスリッパークラッチが採用されており、エンジンブレーキをかけてもそのパワーを的確にコントロール可能。これらすべてを引き立てるデザイン性を兼ね備えたこのV-ROD は、近い将来を見据えて誕生した革新的モデルと言えよう。
このモデルは全長が2410ミリ、ホイールベースが1700ミリとなっており、ファミリー同様ドラッグレーサーとしての高速性能と直進性能を最大限に引き出している。その迫力たるや実際に目で見るとひしひし伝わってくる。
始動したDOHC1,250cc エンジンレボリューションから生まれる鼓動は、スポーツスターやビッグツインとはまったく違った、小刻みに体へと伝わってくる地鳴りのようだ。ボディパネルからシート、リアへと流れてくるフォルムは確実にマッシブスタイリングだが、いざ乗ってみると思ったほどファットではないイメージ。
愛称はマッスルであるが、どちらかと言うと体脂肪率の低い格闘家・といったかんじ。アクセルを回してみると湧き上がるようなパワーがワイドタイヤへと伝わってくる。さらに車体を推し進めると、このモデル独特の走りが始まる。この時からマッスルへの走りへの期待感は一層高まってくる。マッスルはまるで水を得たかのように道路を踏みしめながら走る。
まるでスーパースポーツのような切れ味にいいスピード感とは違う重さが伝わる走りはドラッグレーサーそのものだ。体の芯に伝わるエンジンの鼓動がライダーの気持ちを高揚させる、まるで魔性のマシンと言えよう。
呻るのは、ハーレーの未来像
このマッスルの最大の特徴とはいったいどういったことなのだろうか。このモデルの攻撃的かつ暴力的な走行性能は、ストップ&ゴーが多い日本の道路事情に全くあっていないと言えよう。
ぐずぐずしたことを嫌うアメリカ人らしい発想から生まれたこのマッスルはハーレーが描いていく未来の姿そのままが反映されている。
100年以上もの歴史があるハーレーというメーカーは、当然ながらもこれからその歴史を伸ばしていくのだが、いつの時代であってもパイオニアと言われる存在は何度となく壁にぶつかり、その身を削りながらも突き進んで、新しい価値観を生み出してきた。
マッスルのオーナーになることは、ハーレーダビットソンという会社とともに時代の最先端に立つということなのだ。マッスルのフォルムを見ればそれは一目瞭然で、ただ後ろを振り返らず前進する猛者を求めるモデルと言えるだろう。
なので、オーナーにはパイオニアとしての覚悟が問われると言ってもいいだろう。誰もがどうしてもハーレーダビットソンというブランドの名前を聞くと、ビンテージ風のビッグツインを思い浮かべるかもしれないが、あえてこのVRSC ファミリーの面白さを体験してみるということをおすすめしたい。